在宅やリモート勤務で「人は何をするか」を整理した概念図を提案:レビュー文献を基にした6つの行動次元
この研究は、テレワーク(在宅やリモートでの仕事)で働く人々が実際にどんな行動をとるかを、既存のレビュー研究をまとめて体系化したものです。研究者たちは「テレワークの条件が、従業員や組織の結果にどうつながるか」を説明するために、行動を中心に据えた概念的な枠組みを作りました。ここで示される考えは、検証すべき提案(テスト可能な主張)として提示されていますが、まだ広範な実証研究で確認されたわけではありません。
研究チームはまず、PRISMA(体系的レビューの手順)にもとづく検索をSCOPUSで行い、25,081件の候補の中から最終的に114件のレビュー論文を分析対象に取り上げました。分析手法にはconstructivist grounded theory(構成主義的グラウンデッド・セオリー)を使い、文献に現れる行動や要因を段階的にコーディングして概念を組み立てました。これは既存の結果をただまとめるだけでなく、そこから関係性を組み立てて理論的な枠組みを作る方法です。
得られた「テレワーク行動」の内容領域は6つの次元に分かれます。パフォーマンス(仕事の成果や効率)、コミュニケーション(他者とのやりとりのしかた)、環境に関する行動(作業場所や物理的な工夫)、タスクの進め方(仕事の進め方や時間管理)、政策に関する行動(会社の規則・制度に沿った行為)、そしてウェルビーイング行動(健康や心の状態に関わる行動)です。これらは、単に「在宅かどうか」という二分では捉えられない、より細かな行動の幅を示します。
枠組みはまた、行動の前にある要因(前提条件)と、行動から生じる結果も整理しました。前提条件には個人の特性、職務の性質、組織の規範、技術的要因、作業環境が含まれます。結果は職務満足、成果や生産性、離職、健康とウェルビーイング、仕事と生活のバランス、社会的孤立などです。さらに関係を左右する文脈的な調整因子として、テレワークの形態(頻度やハイブリッド等)、働く人の好み、文化や国の文脈が挙げられています。
この枠組みの意義は二つあります。第一に、テレワークの「条件」と「結果」の間にある『人がとる具体的な行動』を明示した点です。多くの先行研究は条件から直接満足度や生産性を論じてきましたが、ここでは行動を媒介変数として位置づけ、測定や介入の狙いどころを示します。第二に、行動を多次元の構成概念として整理したことで、将来的な尺度(行動を測る道具)開発や、企業がどの政策や研修を通じて働き方を改善できるかの指針になる可能性があります。
重要な制約も明示されています。本論文の主張は、論文レビューの集積に基づく「提案」であり、14の命題(プロポジション)はまだ実証的に検証されていません。分析は構成主義的な手法で行われており、研究者の解釈が反映されています。加えて、テレワークは形態や文化で大きく異なるため、提案を一般化するにはさらなる国際的・実証的な研究が必要です。提供された抜粋は全文でない可能性もあるため、詳細を知りたい場合は論文全文の確認が望ましいと著者自身が述べています。