ベンチャー投資は運か技量か? 制約付きランダム配分と比べると違いは小さいと報告
この論文は、ベンチャーキャピタル(VC)が偶然以上の投資センスを示しているかを調べています。研究者は、実際のVCポートフォリオを「制約付きランダム」なベンチマークと比べました。ベンチマークは投資の時期、地域、業種構成、ポートフォリオの規模といった特徴を保ちながら、個別の企業の選択だけをランダム化します。
分析に使ったデータはCrunchベースに基づきます。調査対象は2010年から2022年に設立された26,522社と、8,249の投資家です。対象はシード(Seed)からシリーズC(Series C)までの資金調達の連続性を見ています。各企業の「マルチプル」は、あるラウンドでの調達額に対して次のラウンドで得た調達額の比率です。次のラウンドが3年以内に見つからなければ、その企業のマルチプルは0と扱います。
具体的な比較方法はモンテカルロ法です。各投資家について、同じ年・同じ業種クラスター・同じ地域に属する取引から、投資数を保ったまま無作為に取り出します。これを1,000回繰り返してランダム配分下でのポートフォリオ分布を作ります。こうして実際のポートフォリオ分布とベンチマーク分布を直接比べられるようにしています。
結果は一貫して慎重な内容です。全ての資金調達段階で、実際のポートフォリオの分布はランダムなベンチマークに非常に近いと出ました。特に「高い勝ち筋」(右裾)の確率を高めているという証拠は見つかりませんでした。分布の下側には小さなずれがあり、ゼロ扱いの解釈に敏感です。論文は、最良の成績を出したポートフォリオも、ランクに応じたランダム期待値を上回っていないと報告しています。
重要な注意点も示されています。研究は企業の評価額ではなく公開された調達額だけを使っています。次のラウンドがないことを必ずしも「経済的失敗」とは断定できません。また、公開データに頼るため、深刻な失敗が記録されにくく、負の極端事象が過小に表れる可能性があります。結論として、研究者らは、極端な成功が成果を支配する重い裾(ヘビーテール)環境では、集計レベルでの「腕前」を確信するのは難しいと述べています。金融アナリストの業績予測についても同様の結論が示されています。