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2026年9月に米国の軍当局が公開した赤外線動画には、中東上空を飛ぶとされた6つの小さな球状物体が「時速約480マイル(約770 km/h)」で移動していると記された報告書が付いていました。新たにarXivに投稿された研究(arXiv:2610.08692v1)は、この動画の各フレームで6物体それぞれの輝度(明るさ)を定量的に測定し、従来の説明とは異なる可能性を検討しています。研究者らの慎重な結論は、「鳥」が最も妥当な説明の一つである、というものですが、確定的ではないと強調しています。
研究チームは、動画の各フレームについて個々の物体の輝度を追跡しました。すると、6物体はいずれも毎秒7.1〜7.9回で規則的に明るくなったり暗くなったりする(フリッカー)ことが分かりました。注目すべき点は、物体ごとに振動数が微妙に異なり、互いに位相がずれていることです。著者らは、この周期的な輝度変動がカメラ圧縮やセンサー特性による人工的なアーティファクトではないことを、定められた位置に常時一定輝度の標的を置く実験で確認しています。
さらに比較対象として、Galileo Projectがラスベガス近郊で運用する地上設置型赤外線カメラの映像を同じ手法で解析したところ、空中を飛ぶ動物が毎秒3.4〜10.0回の周期で輝度を変えている例が得られました。この振幅・周波数帯域は、鳥類の羽ばたき周波数として知られる値と重なります。研究者らは、7〜8 Hz 程度の周期は「小型の鳥の羽ばたき」と整合することを指摘しています。
速度に関する解釈も重要です。航空機から見た地上投影速度(ground-projected speed)は、対象の真の速度だけでなく、視線方向や高度差によって大きく変わります。論文では、もし物体が航空機の高度の60〜80%付近にほぼ静止していたならば、地上に投影される見かけの速度が報告されている約480マイル/時に一致することを示しています。つまり、物体が機体から近い位置を飛んでいれば、「非常に高速に飛んでいた」とする印象は誤解を招き得るということです。
著者らの総合的な評価は、6つの物体を「機体に近いところを飛ぶ少数の鳥の群れ」として説明することが最も単純で辻褄が合う、というものです。ただし、論文は断定を避け、赤外映像と追加のセンサ/プラットフォーム情報の公開があればこれらの仮説をさらに検証・反証できると述べています。実際、映像が大幅に編集・秘匿されている状態では、カメラの向きや高度、撮影条件などの情報が欠けており、最終判断には限界があるとしています。
この研究の意義は二つあります。一つは、赤外線で撮影されたような“未確認現象”の映像でも、再現可能な定量的手法を用いれば具体的な仮説を検証できることを示した点です。もう一つは、データの透明性(生データやセンサ情報の公開)が科学的検証を進める上で重要であることを改めて示した点です。論文は、追加データの公開を求めることで、より確かな結論へと導くことが可能だと結んでいます。
結論として、本研究は「映像内の周期的な明るさの変動」が鳥類の羽ばたきと整合することを示し、目撃報告に対する慎重な自然現象による代替説明を提示しています。とはいえ、完全な確証にはさらなるデータが必要であり、研究者らもその点を明確にしています。映像やセンサの原データが公開されれば、今回の解析を独立に再現し、より決定的な判断が下せる可能性があります。