中間測定とリアルタイム制御を光学共振器で高速化した中性原子量子アレイ
この研究は、量子計算で重要な「途中で一部を測定して、その結果に応じて即座に動作を変える」操作を、中性原子アレイで大幅に速く行えることを示しています。研究者らは高品質な光学共振器を使って、測定とその後の制御(フィードフォワード)の一連の時間を従来の1ミリ秒以上から100マイクロ秒未満に短縮し、最短で45マイクロ秒を実現しました。これにより、誤り訂正や適応回路など多くの量子情報処理プロトコルの実行が現実的になります。
実験では、1次元の光ピンセットに載せた5つのルビジウム87原子を、780ナノメートルの光に共鳴する近心型ファブリ・ペロー共振器の軸上に並べました。未測定のデータ量子ビットには1529ナノメートルの「シールド光」で局所的な光シフトを与え、光学共鳴からずらして保護します。一方、測定対象の量子ビットには共鳴近傍の780ナノメートルプローブ光を当て、共振器によるPurcell増強(共振器が放出光の取り込みを早める効果)で放出光を効率よく集めて状態を判別します。原子間の間隔は19.5マイクロメートルで、系の結合度合い(単一原子協同能)はおよそ3.0でした。
測定性能は高く、4つの量子ビットを順次中間測定した実験では、明るい状態の検出誤差が平均で約0.9%(不確かさあり)、暗い状態の誤差が約0.2%でした。検出光子を数える方式で、2個の光子を検出した時点でプローブを止める適応ゲーティングを行うために、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)を使ってリアルタイム制御しました。これにより測定中の原子損失率は95%から平均8%へ下がり、平均の明るい状態検出時間は約9.5マイクロ秒に短縮されました。ただし、より長いプローブ時間は光子数を増やして識別を良くしますが、同時に原子の散乱による加熱や損失、データ量子ビットへの妨害を増やすというトレードオフがあります。
さらに研究チームは、測定で生じる位相のずれをリアルタイムで補正するフィードフォワードを実演しました。四つの量子ビットを中間測定しても、第五の未測定データ量子ビットのコヒーレンス(量子のまとまり)は2%未満しか減りませんでした。測定結果に基づいて位相を補正したり、最適な状態識別を行って条件付きで状態を作る適応回路を実装したりして、実運用に近い中間測定と制御の例を示しています。全体の測定とフィードフォワードのサイクルは100マイクロ秒を下回り、最短で45マイクロ秒に達しました。
重要な制約も示されています。検出誤差は原子の運動を引き起こす反動(recoil)や早期の光ポンピング(期待する蛍光が止まる現象)で制限されます。シールド光の強さや周波数の選び方によって保護効果が変わり、弱いシールドでは一部の原子で誤差が増えることが観察されました。また、共振器光との相互作用が原因となる、理論的なコントラスト低下の下限も存在します。これらの点は設定や規模を変えたときに性能がどう変わるかを左右するため、今後の拡張や実用化では注意が必要です。