SU(3)格子ゲージ理論での場の分解:モノポール成分と残りの成分の静的ポテンシャルの一致はゲージ固定に依存する
この論文は、強い相互作用を記述するSU(3)ゲージ場を二つの部分に分けたときに、全体の静的ポテンシャルがその二つの和で再現できるかを調べたものです。研究者らは「モノポールが作るアベリアン成分」と「モノポールを除いた修正された非アベリアン成分」に分解し、それぞれから得られるポテンシャル V_mon(r) と V_mod(r) を元のポテンシャル V(r) と比較しました。主な発見は、分解がうまく成り立つかどうかが、ゲージ固定のやり方(いわゆるグリボフコピーの取り方)に強く依存する、ということです。ある取り方では大きな距離で差が出ますが、別の取り方では全ての距離で良い精度で成り立ちました。
方法は次の通りです。まず格子上でMaximal Abelian gauge(最大アベリアンゲージ、MAG)という条件でゲージを固定し、非対角成分と対角(アベリアン)成分に分けます。対角成分はさらに「モノポール(特異)部」と「光子(正則)部」に分解できます。格子計算はWilson作用を使い、結合定数β=6.0と6.1を用いて、格子間隔 a≈0.93 fm と 0.79 fm の二つの場合で行われました。静的ポテンシャルは長方形のWilsonループから抽出し、比較のためにポテンシャルを基準点 r0/2(r0=0.5 fm)でそろえています。信号改善にはAPEスミアリングやハイパーキュービックブロッキングという標準手法を使いました。
ゲージ固定とグリボフコピー(異なる極値を取る同じ場のゲージ変換で得られる解)への扱いが結果を左右しました。最適化に有利とされるシミュレーテッド・アニーリング(SA)を使い、1構成当たり20個のグリボフコピーを生成して操作量(ゲージ固定関数)の最小値を選ぶと、V_mon + V_mod は大きな距離で元の V(r) と大きくずれました。ずれの原因は V_mon の「ストリング張力」(ポテンシャルの線形部分)が小さいことにあり、この振る舞いは用いた二つの格子間隔の間で変わりませんでした。
一方、緩和+過緩和(RO: relaxation plus overrelaxation)というより単純なアルゴリズムで得た別の一群のグリボフコピーを用いると、V(r) ≈ V_mon(r) + V_mod(r) の関係が全距離で良好に満たされました。これが本研究の主要な結果です。また別の分解(非対角成分とアベリアン成分の和 V_offd + V_Abel)を同じ条件で調べると、左右は一致せず、主にクーロン(1/rに近い)項の差が不一致の原因であることも示されました。
この研究の意義は、格子計算での場の分解が「閉じた形」でポテンシャルを説明できるかを評価し、モノポールの役割やゲージ固定の扱いが物理量に与える影響を示した点にあります。ただし重要な注意点があります。結果はグリボフコピーの選び方に強く依存し、どの選び方が物理的に正しいかは結論づけられていません。格子間隔やゲージ固定の影響をさらに詳しく調べる必要があり、著者らも追加の研究を進めていると述べています。