二層グラフェンのゲート定義量子ポイント接触で近接誘導型超伝導を実現:導電性増強とギャップ上での超伝導崩壊を観察
この論文は、二層グラフェン(bilayer graphene, BLG)で作ったゲート定義の量子ポイント接触(QPC)が、単一のアルミニウム超伝導電極によって超伝導相関を受ける様子を報告します。超伝導が近接誘導されると、1次元の伝導モードに対応する伝導度の段差(導電度プラトー)が通常状態より大きくなりました。さらに、超伝導が失われる際に現れる「ギャップより上の伝導度異常(above-gap anomaly)」を観測し、これがアンドレフ余分電流(Andreev excess current)の崩壊を示す分光学的サインになっていることを示しました。
実験では、hBN(六方晶窒化ホウ素)で挟んだBLGに、75 nmの間隔を持つ分割ゲートとチャネルゲートを配置したデバイスを作製しました。バックゲートはグラファイトで、超伝導電極はTi/Al(5/40 nm)です。超伝導電極の位置は最狭点から約350 nm離れています。まず1.7 Kで測定し、超伝導電極が常伝導状態のときに導電度がGn=(4e^2/h)N(N=1,2,3,...)近くの段差を示すことを確認しました。続いて10 mKまで冷却して超伝導状態で測ると、各プラトーの高さが約1.25倍に増幅しました。
増えた伝導はアンドレフ反射によるものと解釈されます。アンドレフ反射とは、通常金属側から入ってきた電子がホール(正孔)として反射されると同時に、対(クーパー対)が超伝導電極に入る過程です。完全に透過する界面ならば導電度は2倍になりますが、本実験では増加率が約1.25倍で、これをBTK(ブロンダー=ティンカム=クラプウィック)枠組みで解析すると有効な界面透過率はτ≈0.9と見積もられました。有限バイアス分光では、コヒーレンスピークから超伝導ギャップ∆≈120 µeVを取得しています。更にバイアスを上げると、ギャップより大きな電圧で明瞭な導電度ディップが現れます。これは超伝導が失われ、アンドレフ余分電流が崩壊することに対応すると判断しています。
重要な結果として、余分電流の大きさはQPCのモードが一つずつ開くにつれて系統的に増加しました。また、電流バイアス測定では超伝導の崩壊に伴うスイッチング電流もQPCモード構造に従い離散的に変化しました。これらは、1次元の量子モードが平衡状態の近接効果(アンドレフ伝導)と非平衡時の超伝導崩壊の両方を支配することを示しています。モード占有で超伝導特性を制御できる可能性がある点が注目されます。
ただしいくつかの注意点があります。デバイスでは完全なピンチオフが達成できず、約R∥=5 kΩの並列導電路が残りました。得られたギャップ∆は同厚のアルミ塊の期待値(約180 µeV)より小さく、Ti/Alの多層構造やデバイス近傍の散乱、拡散性SN接合で見られる再入性効果、あるいはQPCと超伝導電極間の有限サイズが与えるトゥーリスエネルギーの影響でピークが丸くなる可能性が示唆されています。また、測定にはメソスコピックなゆらぎも重畳しており、報告は単一デバイスの結果に基づきます。PDF抜粋はここで途切れているため、さらなる詳細や追加試験については元論文を参照する必要があります。