「エルドシュ—ソス予想」を密なグラフでほぼ解決 — 大きな木は見つかる
この論文は、エルドシュ—ソス(Erdős–Sós)予想の「密なグラフ」場合を証明します。予想は簡単に言うと次の通りです。頂点数が n のグラフが (k−2)n/2 を超える辺を持てば、それは必ず頂点数 k の任意の木を含む、というものです。著者らは、任意の正の定数 γ に対して、ある大きさ n0 が存在し、n≥n0 かつ k≥γ n のときにこの予想が成り立つことを示しました。言い換えれば、k が n に比例して大きい「密な」場合には、平均次数が k−2 を超せば任意の k 頂点の木が見つかる、という結果です。
彼らの手法は矛盾法に基づきます。まず、反例が存在すると仮定して最小の反例(つまり「頑丈な(robust)」グラフ)を取ります。次に、対象の木を一定個数の小さな根付き部分に分解し、Szemerédi(セメリェディ)の正則性補題と呼ばれる道具を使って大きなグラフを「縮約グラフ」に分割します。小さな部分木は縮約グラフの辺に対応する正則なペアへ順次埋め込んでいく計画です。
縮約グラフの中で必要な構造を見つけることが鍵でした。論文では「クラスタ」と呼ぶまとまりや、いくつかの種類のマッチング、そしてそれらの「障害(obstruction)」を定義して扱います。補題や補助定理を使って、ホストグラフの高い密度と頑丈さからこうした有利な部分構造を確保します。さらに、場合分けに応じたきめ細かい動的埋め込み操作を設計して、木のパーツを順に埋めていきます。補助的に用いられる別論文の主要定理(robust なグラフには平均次数がある閾値を超えると任意の大きさの木が含まれる、という主張)も重要な役割を果たします。
この成果の意義は二つあります。第一に、エルドシュ—ソス予想の密な場合について近似ではなく完全な解決を与えた点です。第二に、これにより1970年代にエルドシュとグラハムが提起した「多色 Ramsey 数(多色で辺を塗ったときの最小の頂点数に関する問題)」に関する51年越しの問いに答えています。論文はまた、これまでに出た多数の部分結果や直近の近似証明との関係も整理しています。
重要な注意点もあります。今回の定理は「十分大きな n」に対する主張です。Szemerédi の正則性補題などを使うため、閾値 n0 は概念的には存在しますが非常に大きく、具体的な値や小さな n に対する扱いは示されていません。また、この結果は k が n に線形に比例する場合に限られます。したがって、k が n に比べて小さい別の領域や完全に一般的な場合まで予想が解決されたわけではありません。論文中でも部分的な条件や複雑な場合分けが残っており、不確かさや細かな技術的仮定は存在します。