共通の自動入札アルゴリズムが電力用バッテリーの競争をそろえ込む証拠:オーストラリア市場の観察
この論文は、競争相手が同じ第三者の自動入札(オートビッディング)アルゴリズムを使うと、彼らの入札行動が互いの利益を反映するようになるかを調べた研究です。対象はオーストラリアの全国電力市場で、各バッテリーの入札が5分ごとに観測でき、どの自動入札プロバイダーが入札を作っているかを特定できます。著者らは、同じプロバイダーが作る入札が一緒に動くかどうかを丁寧に検証しました。
研究チームは、まずデータから同一プロバイダーの入札が同期していることを示しました。入札の「共動」は、ある公表改革(需給がひっ迫している状態=スカーシティを見やすくした開示改革)が行われた後に強まりました。こうした情報は、本来はバッテリーが安く買って高く売るという効率的な裁定(あーびとらーじ/売買差益)を促しますが、同時に同じ情報を使う競合の入札をそろわせる効果も生んでいます。
共動が単に同じ情報を使っていることによるのか、それとも競合相手の利益を考慮して行動しているのかを区別するために、著者らは各バッテリーの「貯蔵エネルギーの動的価値」を推定しました。次に、仮想的な入札に置き換えて市場を再計算(リクリア)し、どの入札が実際にどれだけ利益に影響したかを調べました。その結果、所有者レベルの利得だけでは観察される入札を説明できませんでした。具体的には、あるバッテリーは自分で利益を得られる取引を見送ることで、同じプロバイダーを使うライバル所有者が得る価格を守っているように見え、推定された「ライバルの利益への重み」はほぼ1に近い値になりました。
このような振る舞いは、プロバイダーが市場の「マージンに近い」バッテリー容量(価格に影響を与えうる余剰能力)の約30%を超えるシェアを持つ場合にのみ観察されました。これは設置容量ベースではおよそ20%のシェアに相当します。著者らは、現在の装備状況で消費者に年間換算で約550万ドル(オーストラリアドルか米ドルかは本文での前提に依る)相当のコストを生んでいると推定しています。
重要な注意点もあります。まず、この分析は観察データとモデルに基づく推定に依存しています。影響や金額の推定は現在の装置構成と前提に左右されます。また、検出された行動はこのオーストラリアのバッテリー市場での結果であり、他の国や他の種類の電源で同じ結果が出るかは不確かです。最後に、著者らは問題の主体を資産所有者ではなくアルゴリズム提供者のレベルで特定しており、従来の所有権に基づく市場集中のチェックだけでは見逃されるリスクがあると指摘しています。