JWSTの新解析でHR 8799に「候補」第5惑星を検出 — 約7天文単位、木星数個分の質量の可能性
要点:ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の近赤外装置NIRISSに備わる開口マスク干渉法(AMI)を使い、恒星HR 8799の周りに新しい「候補」惑星を直接撮像しました。検出された天体はF380Mフィルターで星に対する明るさの比(コントラスト)が約2×10^-4、投影分離が約150ミリ秒角(非常に小さな角度)で、恒星からの距離に換算すると約7天文単位(地球と太陽の距離の7倍)に相当します。明るさからは「木星数個分」の質量と推定されますが、現時点では候補です。確定には追加の観測が必要です。
何をしたか:研究チームは2023年8月3日に行われた公開アーカイブデータ(JWST NIRISS のAMIモード、プログラムGTO 1200)を解析しました。観測はF380Mフィルターで合計約1553秒の露出、6864回の積分から成ります。較正のために基準星HD 93649も観測され、こちらは約2780秒の露出でした。AMIは望遠鏡の主鏡に小さな穴を開けたように振る舞わせることで干渉を起こし、通常の撮像よりも内側の小さな角距離(恒星に近い場所)まで高い分解能とコントラストで探査できる手法です。
解析の工夫:この検出は新しいデータパイプライン「amigo」によって可能になったと報告されています。amigoは光学経路や検出器の電子的な系統誤差を詳しくモデル化し、従来の解析で残っていた系統誤差を取り除くことで、理論上の「光子雑音」(観測で避けられない基本的なノイズ)に近い性能まで到達したと述べられています。著者らは、以前の研究で見逃されていた信号が、この改良された前方モデル化(フォワードモデリング)により単一バンド観測で再現できたとしています。
なぜ重要か:HR 8799は既に直接撮像された4個の巨大ガス惑星をもつ珍しい系で、年齢は約4000万年と若いと推定されます。既知の4惑星は周期比で1:2:4:8という秩序(平均運動共鳴=周期が整数比になる配置)をとっている見込みで、さらに内側に第5惑星が加わればこの共鳴鎖の理解や系全体の長期的な安定性・進化の解明に重要な手がかりを与えます。今回の候補は既存の最内側の惑星(e)と3:1の平均運動共鳴に近い位置にあり、軌道力学の予測に合致する点も指摘されています。確認されれば、HR 8799は直接撮像された初の5惑星系となる可能性があります。
重要な注意点:今回の発見は「候補」であり、確定的な発見ではありません。信号は著者が示すコントラスト曲線のわずか上(約3シグマ付近)に位置しており、統計的に余裕が大きいとは言えません。解析は単一フィルター、単一のドリフト(dither)で取得されたデータに基づいており、通常推奨されるサブピクセルドリフトによる検出堅牢化が行われていません。したがって追加の波長や時刻での再観測、さらなる位置(固有運動)測定が必要です。また、論文中でもこの候補が以前の地上観測などで見つからなかった理由として、従来解析の感度制限を挙げており、今回の結果は解析手法の改善に大きく依存している点に留意が必要です。