BelleとBelle IIがまれなB+→K+τ+τ−崩壊を探し、新しい上限を設定
この論文は、B+粒子がK+(荷電カオン)と2つのτ(タウ)レプトンに崩壊する極めてまれな過程を探した結果を報告します。研究グループは、電子・陽電子衝突で生成された1.2×10^9個のΥ(4S)(ウプシロン4S)から得たデータを使い、この崩壊の出現確率(分枝比)に対して上限を求めました。観測された事象に有意な過剰はなく、90%の信頼度で分枝比が0.56×10^-3より小さいと結論づけました。これは以前の唯一の結果(BABARの2.25×10^-3)より約4倍改善した値です。
なぜこの崩壊を調べるかというと、標準理論(SM)ではこの種類の変化は非常に起きにくいからです。電荷を変えない「風味(フレーバー)変化中性過程」と呼ばれるこれらの崩壊は、通常ループと呼ばれる間接的な過程でしか起きません。もし標準理論にない重い粒子がそのループに入れば、崩壊の確率が変わる可能性があり、B+→K+τ+τ−はその手がかりになり得ます。標準理論の予想は(チャーモニウム寄与を除いて)おおむね1.0–2.0×10^-7ですが、新しい理論では最大で1000倍に増える可能性が示唆されています。今回の実験上限はそれらの範囲よりまだかなり大きく、標準理論の予想には届いていません。
実験では、同じ衝突で対になって出るもう一方のB粒子を「完全に」再構成することで信号側の情報を引き出しました。具体的には、パートナーBの典型的なハドロン崩壊を詳しく組み立てる全事象解釈(FEI)と呼ばれる方法を使い、残りの粒子の中からチャージドカオン1個とτの崩壊で生じる電子・ミューオンを探しました。τは通常ニュートリノを複数生成するため、ニュートリノは検出されず、特徴的な運動量分布が得られない点が主な困難です。そこで、両B候補の既知のエネルギーを引いた後に電磁カロリメータに残る余剰エネルギーが小さい事象を信号寄りと見なして探索しました。
解析はBelle(KEKB)とBelle II(SuperKEKB)で独立に行い、最終的に結果を組み合わせました。背景の評価や選択基準の最適化には大規模なモンテカルロ(模擬)シミュレーションを用い、シミュレーションは実データより大きなサンプルで行われました。実効率は課題で、パートナーBの再構成後に信号候補を残せる割合は検出器ごとに異なり(Belleで約0.8%、Belle IIで約0.5%)、正しくパートナー崩壊が再構成される割合はそれぞれ約28.7%と43.9%でした。
重要な注意点として、この探索はまだ標準理論が予想する極めて小さい確率に達していません。ニュートリノが見えないために背景が非常に大きく、感度向上にはより多くのデータか別の手法が必要です。また本解析では信号側のτ崩壊を電子・ミューンの粒子を通じた「レプトニック」経路のみで扱い、これが背景低減には有利な一方で受け入れ効率を制限しています。今回の上限は既存の制約を約4倍改善した重要な前進ですが、標準理論の予想値を直接テストするにはさらに高い感度が求められます。