ジャンクション不要の超伝導ダイオードを実現、磁化で極性を切り替えXNOR論理を動作確認
研究者は、弱い接合(ジョセフソン接合)を使わずに動く「超伝導ダイオード効果」を、層状(ヴァン・デル・ワールス、vdW)材料のみで作ったデバイスで示しました。超伝導ダイオード効果とは、抵抗がゼロに近い超伝導電流が一方向には流れやすく、反対方向には流れにくくなる現象です。今回の装置は、磁性体の向きでダイオードの極性(正向きか逆向きか)を切り替えられる点と、小さな磁場で高い効率(最大で約30%)を達成した点が特徴です。さらに、この現象を使って二入力の排他的ノット(XNOR)論理の動作も示しました。
実験では、超伝導体としての薄いNbSe層を強磁性体Fe3GeTe2(F3GT)で挟んだ三層(F/S/F)構造を作製しました。サンプルの厚さはNbSeが約35 nm、上下面のF3GTは18 nmと231 nmで、意図的に左右非対称にしています。電気伝導の測定から、F3GTの磁化をあらかじめ設定する(プレマグネタイズ)ことで、NbSe層内の臨界電流が一方向で大きくなる向きが入れ替わることを確認しました。プレ磁化に±1 Tを用いると極性が反転し、磁化が残った状態(残留磁化、remnant magnetization)では外部磁場無しでも整流が起きます。非相反性のヒステリシスからは、F3GTの保磁力(磁化が反転する際の磁場)が約0.28 Tであることが示されました。測定ではこの整流効果が温度5.5 Kまで持続することも報告されています。
動作の基礎には「磁気近接効果」による対称性の破れがあります。磁性体が隣接することで、時間反転対称性や空間反転対称性が壊れ、粒子対(クーパー対)の運動量がゼロでない状態が誘起され得ます。こうした有限運動量のクーパー対が生じると、正方向と逆方向で臨界電流が異なる、すなわち非対称な超伝導伝導が現れると考えられます(論文ではFFLO型と呼ばれるイメージが示されています)。F3GTの強い垂直磁気異方性により、磁化の向きでダイオード極性を制御できる点が重要です。
このアプローチの利点は、従来型のジョセフソン接合を用いる場合に必要な微細な弱リンク作製を省けることです。接合がない分、製作の手間や接合品質に依存するノイズや寄生容量の問題を減らせます。実際、今回のvdW単層的な構造で得られたダイオード効率は、ジョセフソン型の結果と比較して遜色のない値(最大約30%)に達しています。研究者らはこの特性を利用して、外部磁場や磁化の向きに応じて動作するXNOR論理ゲートを作動させ、超伝導を用いた低消費電力の論理回路への応用可能性を示しました。
留意点として、与えられた抜粋は本文の一部であり、臨界温度など一部の数値が抜けている箇所があります。実験は低温(ケルビン単位)での動作を前提としている点、そして磁化の設定や保持を正確に制御する必要がある点は実用化に向けた重要な課題です。また、効率の最良値は小さな外部磁場(報告では50 mT付近)で観察されており、完全に外部磁場無しで安定して高効率を保てるかどうかは、使う磁性層の特性やデバイス設計に依存します。これらの制約を踏まえつつ、今回の結果はジョセフソン接合に頼らない新しい超伝導デバイス設計の実証として注目できる成果です。