エルデシュ問題550を解決:木と完全多部グラフのラムゼイ数に上限を示す定理
この論文は「エルデシュ問題550」と呼ばれる問題を解決します。問題は次の形です。R(J,L)は、完全グラフの辺を赤・青に塗り分けたときに必ず赤のJか青のLが現れる最小の頂点数です。著者らは、固定された部の大きさ m1≤⋯≤mk と整数 k≥2 に対して、十分大きな頂点数 n の任意の n 頂点の木 T について、次の不等式を示しました:R(T,K_{m1,…,mk}) ≤ (k−1)(R(T,K_{m1,m2})−1)+m1。ここで K_{m1,…,mk} は各部が独立な完全多部グラフです。要するに,多部グラフに対するラムゼイ問題は,最小の二部の場合(最も小さい二つの部)での問題に還元できる、という主張です。
証明の骨子は二つの新しい道具の組み合わせです。一つは「オフ・トゥラーン(off-Turán)木埋め込み定理」と呼ばれるもので,トゥラーン境界に近い密度を持つグラフに対して大きな木を埋め込めると保証します。もう一つは,表現可能な有界ランク超グラフの阻害(obstruction)を丸めて扱うためのコンパクト性・丸め(compactness-and-rounding)定理です。埋め込み側の道具は,Szemerédi の正則性補題(大規模グラフを等しい塊に分けて乱雑さを管理する理論)と,Hladký と Piguet による局所的正則マッチング埋め込み補題を用いて導かれます。コンパクト性の議論では「影(shadow)超グラフ」を使い,極限過程で頂点が逃げていく場合にも阻害構造を保持します。
なぜ重要か。エルデシュ問題550は長年の未解決問題でした。今回の定理は,古くから知られる下界(Burr の標準的構成など)に対する上界を与え,多部グラフ側の難しさが最も小さな二つの部に関わる二部問題に制御されることを定量的に示します。論文中の別表現では,R(T,F)−(q(n−1)+a) の余剰は q(r−n) によって抑えられると書かれています(ここで q=k−1, a=m1, r=R(T,K_{m1,m2}))。つまり多部の場合の余剰は二部問題の余剰に依る、という具体的な関係が得られます。
重要な限定条件と不確かさも明記されています。主張は「十分大きな」木(頂点数 n があるしきい値 n0 以上)について成り立ちます。しきい値 n0 は部の大きさ m1,…,mk に依存します。証明は Szemerédi の正則性補題や安定化(stability)定理、Kővári–Sós–Turán の定理など,現在の極端組合せ論でよく使われる強力だが技術的な道具に依存しています。これらの道具の使用は,しきい値が理論的には大きくなることを意味しますが,論文はその存在を保証します。
文献との位置づけとして,これまでにも次数が固定された木の場合の「ラムゼイ善良性(Ramsey goodness)」に関する結果はありましたが(Balla・Pokrovskiy・Sudakov らの仕事等),それらは任意の木すべてを扱う今回の結果とは範囲が異なります。また,部分の一つが大きく成長する別の領域は Mi と Wang によって扱われており,本論文は部の大きさを固定した別の自然な状況での完全な解決を与えます。