TANGO:言葉で指示して全身を使って狭い屋内を移動するヒューマノイド制御モデル
この論文は、散らかった屋内空間をヒューマノイドロボットが安全に移動する方法を扱います。従来の研究は床面の2次元経路計画に注目しがちですが、狭い場所や障害物の多い場所では腕の位置、胴体の角度、歩き方など全身の連携が必要です。著者らはこうした「全身」適応を言葉で指示された移動タスクに取り入れる新しい仕組みを提案しました。
提案システムはTANGOと呼ばれます。TANGOは自然言語の指示とロボット視点のRGB画像を入力として受け取り、直接29自由度(29-DoF)の関節空間アクションを予測します。つまり、経路だけでなく腕や胴、脚の動きを関節レベルで出力し、それを下流の全身制御に渡して動かします。重要な点は、この学習をすべてシミュレーションだけで行ったことです。
学習に使ったデータは単純な軌道ではありません。著者らは多様な衝突回避動作を合成するパイプラインを作りました。具体的には、全体の経路計画(global path planning)、運動学に基づく全身動作生成、障害物を考慮した動作の編集、そして強化学習(RL: Reinforcement Learning)による追従という工程を組み合わせて、実行可能なアクションの教師データを用意しました。これにより、言葉に応じた全身ポリシーを学べるようにしています。
シミュレーション上の多数の実験で、TANGOは視覚と言語に基づくナビゲーションで最先端の性能を示したと報告されています。特に障害物をうまく交わすような難しい場面で、従来の分割した(モジュラーな)手法より良い結果を出しました。さらに、訓練に実世界データを使っていないにもかかわらず、Unitree G1 というヒューマノイドロボットにゼロショットで適用し、実際の散らかった室内で言葉に従って移動する様子を観察しています。
注意点もあります。学習は主にシミュレーションで行われており、抽象ではありますが実世界との差(リアリティギャップ)は依然問題になりえます。著者らのゼロショット実験は有望ですが、抽象に示された範囲では実世界での長期的な頑健性や多様なロボット・環境への一般化に関する詳細は述べられていません。これらは本文での追加検証や今後の研究課題となるでしょう。