ペロブスカイト太陽電池で注目の「凹凸加工」──光取り込みだけでなく膜作製や強度にも利点
ペロブスカイト系太陽電池に、ナノやマイクロの凹凸(テクスチャー)を入れると、光の反射を減らして取り込みを良くすることはよく知られています。本稿は、それに加えて最近の研究が示す「光以外」の利点を整理したレビューです。具体的には、溶液からの膜のぬれやすさ、結晶の質、電荷取り出し、そして曲げに対する機械的な安定性といった面で改善が報告されています。これらは最終的に発電効率や製造歩留まりに影響します。なお、ペロブスカイト単接合の変換効率は約27%、タンデム型では約35%まで達しており、テクスチャーが技術進展に寄与してきたことも背景にあります。
著者らは近年の論文を調べ、テクスチャーに関連する副次的な利点を四つの分野に分類しました。第一に「溶液のぬれ(ウェッティング)」改善、第二に「結晶性の向上(粒径の増大・配向・相の均一化)」、第三に「電荷取り出しの改善(開放電圧の向上につながる)」、第四に「残留応力の低減やフレキシブルデバイスの曲げ耐性向上」です。多くの研究は最初は光学的目的でテクスチャーを導入していますが、同時にこれらの副次効果が観察されています。
溶液ウェッティングの改善例としては、シリコン底部セルに正弦状のナノテクスチャーを入れ、ホール輸送層として用いた自己組織化単分子膜(SAM、Me-4PACz と呼ばれる化合物のこと)上でのペロブスカイト膜作製が報告されました。これにより、膜に大きな穴が開いて使えないサンプルの割合が平坦面で約50%だったのに対して、ナノテクスチャーでは5%未満に減ったという具体的な数字が示されています。黒シリコンや階層的なマイクロ・ナノピラミッド構造でも、スピンコートやスロットダイ塗布で均一に被覆できることが確認され、テクスチャー表面が溶液を「留める」役割を果たすことが説明されています。
結晶性に関する利点も複数の報告で示されます。黒シリコンやサブミクロンのランダムピラミッド、反転ピラミッド形状、アルミニウム添加酸化亜鉛(AZO)電極をテクスチャー化した例などで、テクスチャー上で成長したペロブスカイトの粒が平坦面に比べて大きくなると報告されました。ある研究では、テクスチャー上の粒径が平坦面の平均の約2倍になり、X線回折のピークが鋭くなって粒界による散乱が減ったとされています。さらに、垂直方向に整列した粒界が形成されることで、電荷が再結合しにくくなると説明されています。別の例では、サブミクロンのランダムピラミッドが内部ピンホールを減らし、光励起による相分離(相の分裂)を抑える報告もあります。
ただし注意点も多く示されています。歴史的にシリコン薄膜では、テクスチャーが層内の亀裂や応力、欠陥密度の増加、p–n 接合の不均一化を招き、かえって性能低下を招いた例があることが指摘されています。ペロブスカイトでも、テクスチャーを使うには塗布条件やテクスチャー形状を適切に合わせる必要がありますし、薄膜の格子定数が歪むことで応力がかかり、その影響が良い方向に働く場合と悪い方向に働く場合がある点も報告されています。総じて、テクスチャーは光学的な利点に留まらず膜作製や電気的・機械的性質にも深く関わることが分かってきましたが、最適化と相互作用の理解にはまださらなる研究が必要です。