「スーパーアース」と「サブネプチューン」の起源と特徴:2014–2025年の知見を総覧
この章は、地球より少し大きい「スーパーアース」と海王星より小さい「サブネプチューン」という、天の川銀河で最も一般的な小型系外惑星の起源と性質をまとめたものです。これらは太陽系には直接の対応物がなく、その成り立ちを理解することが惑星科学の重要課題になっています。研究のまとめは、スイスやヨーロッパを中心としたNCCR PlanetSの活動(2014–2025年)に基づいています。
研究者たちは観測と理論の両面で進展を積み重ねました。観測面では、まずケプラー衛星が小型惑星の高い出現率を示しました。続いて、ケプラーの延長であるK2や全天をほぼ網羅するNASAのTESS(トランジット系外惑星探査衛星)、欧州のCHEOPSなどの宇宙望遠鏡がより明るい恒星を対象に多数の候補を見つけました。地上からは高精度な視線速度(ラジアルベロシティ、RV)計測装置や小型望遠鏡による精密光度観測が追跡に使われました。代表的な分光器にはHARPS、HARPS-N、ESPRESSO、NIRPS、CORALIEがあり、ESPRESSOは内部の安定性から約20センチ毎秒という高い精度を達成し、太陽型星のハビタブルゾーン(居住可能領域)にあるスーパーアースの検出が可能とされます。これらの成果で、PlanetSカタログにおける半径4地球半径未満のトランジット惑星は2014年の43個から2025年には225個に増えました。
高いレベルでは、これらの惑星は「星の前を通過して光をほんの少し遮る」ところを捉えるトランジット法と、惑星が引き起こす恒星の微小な動きを測る視線速度法で性質を測ります。大量のデータから、小型惑星の半径分布が二峰性を持つことが分かりました。ピークがそれぞれ地球の約1.3倍と2.4倍にあり、その間におよそ1.8地球半径付近の“半径の谷(radius valley)”があるという発見です。この谷の位置は軌道周期や母星の質量で変わることも示されています。内部構造の解釈では、同じ質量と半径でも岩石の核に薄い水素・ヘリウムの包膜がある「ガスドワーフ」か、厚い水層を持つ「ウォーターワールド(高温の蒸気層を含む場合もある)」かで見かけの密度が変わり得る点が重要です。
なぜこれが重要かというと、こうした観測と理論の組み合わせが惑星形成論を具体的に試す機会を与えるからです。なぜ中間の半径が少ないのか、どのくらいの大気が保持されるか、岩石と水の比率はどう決まるか、といった問いに答えることで、惑星がどのようにでき、変化するかの物理過程が明らかになります。さらに、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)が個々の惑星の大気組成の探査を始めたことで、内部構造のモデルを大気観測と結びつける新しい道が開かれています。
重要な留意点もあります。まず、質量と半径だけでは内部成分を一意に決められない「組成の退化(degeneracy)」が残ります。複数の異なる内部構成が同じ質量・半径を生み出せます。また、半径の谷の起源には複数の理論があり、軌道距離や母星の性質によって位置が変わるという観測は一義的な結論をまだ許していません。さらに、初期のケプラー発見は母星が遠く暗いため地上での追跡が難しく、サンプルには観測バイアスが存在します。最後に、本章は2014–2025年の進展を概観するものであり、包括的な総説ではない点にも注意が必要です。