素数上の和と積で生じる表現に関する予想を反例で覆す:しきい値は厳密に1/2
この論文は、素数p上の有限体F_pでの「二つの要素の和または積で表せる値」の振る舞いに関する古い予想を否定する結果を示します。研究者は、任意の奇素数p≥5について、集合A⊆F_pを|A|=(p−1)/2の大きさで作り、1がA* = (A+A) ∪ (A A) に含まれないようにする具体的な構成を与えました。つまり、1を和か積で表すことができない大きさの集合が存在するため、Sárközyの予想にある「ある正の定数cが存在して |A|>(1/2−c)p ならば全ての非零元がA*に含まれる」という主張は成り立ちません。論文はこの予想が偽であることを示します。
論文で扱う基本的な定義は単純です。F_pは素数pの剰余環で、A+AはAの元二つの和全体、AAはAの元二つの積全体です。Sárközyの予想は、Aが十分に大きければ(密度が1/2にほんの少し届かない程度でも)非零元すべてが和か積で表せるはずだと述べていました。著者はこの期待に反して、境界はちょうど1/2であり、(p−1)/2の大きさの集合でさえ1を表せないものが作れることを示しました。一方で、|A|>p/2ならば必ずA+A=F_pになることも示しており、しきい値が厳密に1/2であることを確認しています。
反例の作り方は、整数論と組合せ的な考えを組み合わせた単純でわかりやすいものです。まずF_pの各元を頂点とするグラフを作り、頂点uとvを辺で結ぶのはu+v=1またはu v=1が成り立つとき、さらにループ(自分自身への辺)は2u=1やu^2=1のときに置きます。このとき「1がA+AにもAAにも現れない」ことはそのままグラフ上の独立集合(互いに隣接しない頂点の集合)であることと同値です。著者はこのグラフの連結成分を分類しました。{0,1}と{2,1/2,−1}の二つの小さな例外的成分があり、場合によっては方程式x^2−x+1=0の根からなる2頂点成分が一つあるだけで、残りは6頂点のサイクル(長さ6の循環)になっています。各6サイクルから交互に3頂点を選び、小さな成分からも適宜頂点を選ぶと、全体でちょうど(p−1)/2個の頂点からなる独立集合が得られます。これがAの構成で、1はA*に含まれません。
この結果の意味は二点あります。第一に、Sárközyの予想は一般には誤りであり、どんな正の定数cを取っても十分大きな素数で破られます。第二に、しきい値としては1/2が正確であることが確定しました(任意の集合で|A|>p/2ならA+A=F_pとなる簡単な証明が示されています)。重要な注意点として、著者の構成は全て奇素数p≥5についての存在証明です。pが小さい場合や偶数のpはそもそも素数でないため扱い外です。また、与えられた集合は「1」を和や積で表せないことを保証しますが、他の残差に関しては同様の主張をするものではありません。
論文中の主張は形式的にも裏付けられています。主な四つの命題は定理証明系Lean4で形式化され、証明コードが公開されています。したがって論理的な誤りが入り込んでいる可能性は低く、構成と分類の議論は厳密に確認されています。ただしこの研究は存在証明と境界の決定に焦点を当てたものであって、今回の反例構成が他の応用にどう寄与するかという点までは主張していません。