月面に小型望遠鏡を並べる「LUSTER‑net」:短時間で変わる天体を連続観測する構想
LUSTER‑netは、月面に複数の同型望遠鏡ノードを配置して、短時間で変化する天体を長時間・高頻度で追跡するミッション構想です。提案ではおよそ6〜12台の望遠鏡を月面に分散設置し、それぞれ口径は約0.5〜1メートル程度。観測波長はUVOIR(紫外線〜可視光〜近赤外線)を想定しており、地上からは観測しにくい紫外線帯も扱えます。この文書は白書(構想の説明)であり、まだ実機計画ではなく、詳細は今後の検討で決まるとしています。
研究者たちは、月面に置く複数ノードの利点を活かして、地上や低軌道の望遠鏡では得にくい連続観測や迅速な追観測を行えると述べています。月面は地球による遮蔽(地球が視野を横切ること)が少ないため、長時間ぶっ通しで同じ天域を見続けられます。ネットワーク全体で観測予定を自動調整する「ネットワーク知能」によって、複数のノードで撮像(光度曲線や位置測定)と低分散分光(スペクトルで分類や温度などを推定)を協調して行うことを想定しています。外部の警報(例:Rubin望遠鏡や重力波・ニュートリノ観測など)に迅速に応答する運用も想定されています。
想定される観測テーマは幅広いです。系外惑星の大気をつかむための繰り返しトランジット観測、地球と月の観測位置差を利用したマイクロレンズの視差測定(レンズ質量や距離の制約)、近地球小天体や彗星・星間天体の形状・回転・活動の連続監視、超新星や速い短時間現象の初期光度変化やスペクトル、そして重力波・高エネルギー・ニュートリノ事象に伴う電磁波の速やかな追観測などが挙げられます。これらは警報が増えるこれからの時代に、発見から物理理解へつなげるために特に重要だと論文は指摘します。
設計案としては、同一設計の複数ノード(複製可能な望遠鏡ユニット)を採る方針で、0.5〜1メートル級の口径は市販機材と整合しやすいとしています。各ノードはフィルター撮像、低分散長スリット分光、搭載の校正機器、開閉カバー、さらにオンボードや「エッジ」コンピューティング(現場での画像差分や移動物体検出、事象ランク付け、データ圧縮など)を備えることが想定されています。一方で、非恒星追尾(非恒星追跡)や頻繁な軌道計算更新、迅速優先順位付け、通信帯域の制約に対応するための運用面の工夫が必要だとされています。
重要な注意点として、LUSTER‑netはまだ概念段階の提案であり、最適なノード数や配置、口径や装置仕様は今後のASTRA調査(研究検討枠組み)で決めると明記されています。感度や視差の測定精度は事象の幾何学や光度安定性に依存し、すべてのミクロレンズ事象や突発現象で決定的な解を出せるわけではありません。さらに、データの下り(ダウンリンク)容量が限られるため、現地での選別・圧縮や優先化が不可欠です。費用・リスク面で単一大型望遠鏡案と比較した場合の優位性も、詳しい評価が必要だと論文は強調しています。