交互する近接引力で1次元の粒子が「分子」になり分子超流動と相分離を示す
この研究は、1次元格子上で動く粒子が短い距離だけ引き合う場合に何が起きるかを調べています。粒子は「ハードコアボソン」と呼ばれるもので、同じ場所に二つは重なれません。引力が弱いときは個々の粒子が普通の超流動を作りますが、引力が強くなると隣り合う二つが結びついて二量体(ディマー)という小さな「分子」を作り、その分子が主役の分子超流動(ディマー超流動)になります。興味深いことに、中くらいの引力では系が相分離して吸収状態(ある密度まで粒子を取り込み続ける状態)になることも見つかりました。
研究者たちは、格子上の粒子が一つずつ隣に飛ぶ「跳躍」項と、格子の偶数-奇数の組だけに働く近接引力 U を持つ簡単な模型を使いました。理論的にはこの模型はスピンレスフェルミオンにも対応します。解析には密度行列繰込み群(DMRG: density-matrix renormalization group)という数値手法と、引力が非常に大きい場合や非常に小さい場合に成り立つ有効低エネルギーハミルトニアンの摂動展開を用いています。二粒子問題の解析も行い、相転移の起きる目安となる U の値を確認しています。
仕組みを簡単に言うと、U が大きいと隣り合う二粒子が結合してディマーになります。しかしこのディマーは移動しにくい点が重要です。理論解析で得られた有効ハミルトニアンでは、ディマーの実効的な跳躍は非常に小さく、おおむね ˜t ≃ 2 t^4 / U^3 のスケールになります。一方でディマー同士は虚じゅう動(量子ゆらぎを通した仲介過程)によって効果的に反発し、V_eff ≃ 2 t^2 / U のような反発項が現れます。そのため大きな U では動きがゆっくりで反発的な分子液体(分子超流動)が安定します。数値では一粒子の相関が急減する一方で、二粒子(ディマー)相関はべき乗則で落ちることが確認され、弱引力の原子超流動(SF)から強引力の分子超流動(DSF)へと分かれる点が見えます。論文は小密度極限からの比較で第一の臨界点 Uc1 ≈ 3.1 を示しています。
中間の引力域ではさらに興味深い振る舞いが現れます。ディマー間に見かけ上の引力が生じて、局所的に粒子が集まって「電荷密度波の小さな水たまり(puddle)」を作ることが分かりました。この領域では系が吸収状態になり、化学ポテンシャルをわずかに変えるだけで粒子数が飛び飛びに変わる性質が出ます。さらに奇数個の単独粒子を入れると分子超流動が自発的に電荷秩序を示すなど、単独の余剰原子に非常に敏感な「奇数偶数効果」も報告されています。これらはディマーの間に出る引力と反発が複雑に競うために起きる現象です。
重要な注意点もあります。ディマーの実効的な跳躍は摂動的に非常に小さくなります。これによりエネルギーギャップ(Kuboギャップに相当するもの)がきわめて小さくなり、数値計算では機械精度と競合します。論文でも DMRG の計算は主に系のサイズが 100 以下に制限されると述べられています。したがって相図の一部や微小なエネルギースケールについては不確かさが残ります。全体として、この仕事は単純な短距離の引力だけで1次元に強い結合分子と複雑な相が生まれることを示します。合成量子系、特に冷却原子系などで似た効果を探す際の理論的指針を与える結果です。