レンズ不要の極端紫外線ホログラフィーで40 nmの微細パターンを実証
この論文は、波長13.5 nmの極端紫外線(EUV)を使って、レンズを使わずに任意形状のナノパターンを印刷する方法を示しています。研究者らは「EUVホログラフィック・リソグラフィ(EUV-HL)」を用い、これまでの同方式よりほぼ10倍細かい40 nmのクリティカル寸法(CD)を達成しました。従来のEUVホログラフィーの最高解像度は約372 nmでしたが、本研究はそれを大きく上回ります。
研究者たちはまず、コンピュータで設計したホログラム(コンピュータ生成ホログラム、CGH)を作るための逆設計フレームワークを開発しました。フレームワークはマスクの三次元的な回折応答を「移動不変な畳み込み」として近似し、角スペクトル法(角度ごとの波の成分を扱う方法)と組み合わせることで、実際のマスク全体を扱える計算を可能にしています。得られたマスクは、厚さ80 nmのSi3N4膜上に200 nmの吸収層として電子ビーム直描きで作った水素シルセスキオキサン(HSQ)を用いる透過型です。HSQマスクの透過率は13.5%程度でした。
実験は中国のシンクロトロン光源のビームラインで行われました。平面波に近いEUV光で透過マスクを照らすと、マスクで生じる回折がウェハ面上に目標の強度分布を再現します。紙面上の像(エアリアル像)を直接作るため、複雑で高精度な多層反射鏡を要する従来のEUV投影光学が不要になります。露光には同じくHSQをレジストとして使い、実験条件では露光時間は10〜20秒でした。
なぜ重要かというと、EUV-HLは周期構造に限定される既存の干渉リソグラフィーとは異なり、非周期で曲線を含む自由な形状をサポートする点です。サブ50 nmの解像度と任意設計の自由度を同時に示したことで、メタサーフェスやフォトニック結晶、超伝導ナノワイヤーなど、EUVスケールの任意形状パターンが必要な研究分野のプロトタイピングに有望な手段を提供します。さらに、理論的にはEUVより短波長の「BEUV(Beyond-EUV)」領域への応用経路も示唆しています。
ただし重要な制約もあります。使用したHSQは工業用EUVで要求される感度に比べて約1桁感度が低く、通常のEUVスキャナでは露光時間が非常に長くなる可能性があります。今回の短い露光時間は高フラックスのシンクロトロン光源に依るところが大きく、汎用性とスループットの面で課題が残ります。マスクは電子ビーム直描きで作成しており、大面積・高量産には拡張しにくい点もあります。また、モデル化や実験の安定性(コヒーレンスやスペクトル幅は約4%)が成否に影響するため、装置や条件の違いで性能が変わることが予想されます。論文はこれらの点を踏まえつつ、EUV-HLが研究用の柔軟なナノパターン作成手段になり得ることを示しています。