JWSTのMIRIで探したが未検出:ガス運動で示された若い巨惑星候補を直接確認できず
この論文は、周囲のガスの動きに現れる“ゆがみ”から存在が示唆された若い巨大惑星(プロトプラネット)を、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の中赤外装置MIRIで直接探した報告です。もともとアルマ(ALMA、電波望遠鏡アレイ)での二酸化炭素ではなく一酸化炭素(CO)線の観測により、円盤の速度場に局所的な逸脱が見つかり、80〜310天文単位付近に巨惑星がいる可能性が示されていました。研究チームはこうした運動学的な候補を直接撮像で確かめようとしました。対象はHD 163296、RXJ1615.3-3255、RXJ1842.9-3532、SY Cha、LkCa 15の5つの原始惑星系円盤です。
観測にはMIRIのコロナグラフ(星の強い光を遮るマスク)とF1140Cフィルター(波長11.3マイクロメートル)を使いました。解析では、星の光の形(点像応答関数、PSF)を参照星画像で差し引く手法と、中央にある一部解像された内側円盤の光を前向きにモデル化して同時に扱う独自の方法を組み合わせました。こうした処理は、円盤の光が回折模様を支配している場面で若い伴星の検出感度を上げるために使われました。参照データはプログラム外の同フィルター観測も取り込んで多様性を確保しています。
結果は、どの系でも「点状の光源」としてプロトプラネットを直接検出できなかったことです。一方で3つの系では波長11.3マイクロメートルで外側円盤からの拡張した(点ではない)放射が見え、これはALMAのCOで調べられた半径範囲と同程度まで広がっていました。検出感度を評価するために人工的に“偽の惑星”を画像に注入する試験も行い、外側の数百天文単位の距離では大まかに3〜20木星質量(M_J)の上限を置けることが分かりました。ただしこれらの上限は、衛星系円盤など周囲の追加熱源がないという仮定に基づきます。
重要な点は、これらの質量上限がALMAの運動学的解析から推定された約1〜5木星質量に比べて概ね大きいことです。つまり今回の非検出は運動学で示された候補を否定するには十分ではありません。観測感度が制限された主な理由は、中心星近傍の内側円盤や外側円盤からの熱放射や散乱光が回折パターンを支配してしまい、微弱な伴星の信号を隠してしまうことです。さらに、参照星の観測に解像された放射が含まれていたり、目標の一つ(HD163296)では観測時のロール角(鏡筒の向き)が同じになってしまったミスがあり、差し引き処理の効率が落ちた点も挙げられます。
結論として、宇宙望遠鏡を使った今回の試みは、円盤に埋もれた形成中の巨惑星を直接撮像で見つける難しさを浮き彫りにしました。同時に、参照PSF差し引きと内側円盤の前向きモデル化を組み合わせる解析手法や、参照ライブラリを広げる運用上の教訓は得られました。これらの経験は、より高い解像度を持つ今後の地上大型望遠鏡、例えばエクストリームリー・ラージ・テレスコープ(Extremely Large Telescope: ELT)による観測計画を立てる際に役立つと論文は指摘しています。直接検出ができれば運動学的手法の有効性が立証されますが、今回の結果はそれをまだ実証するには至っていません。